20180529【Workshop Tours】江戸風鈴/製作体験at「篠原まるよし風鈴」&「篠原風鈴本舗」レポート②!

製作体験をさせて頂いた「篠原まるよし風鈴」さんの本家でいらっしゃる「篠原風鈴本舗」さんへ5月22日㈫に取材に行って参りました!

【「篠原風鈴本舗」さんと「篠原まるよし風鈴」】

5/19㈯に江戸風鈴制作体験をさせて頂いた、「篠原まるよし風鈴」まるよしさんは「篠原風鈴本舗」の篠原儀治(篠原風鈴二代目)さんの次男さんでいらっしゃいます。

≪江戸風鈴とは≫

江戸風鈴の老舗(有)篠原風鈴本舗さんは2015年で100周年、今年で創業103年を迎えます。

篠原儀治さんが先代から受け継いだガラス風鈴を、江戸時代から江戸(=東京)で作られていたことから、昭和40年頃「江戸風鈴」とブランド名として名付けられました。その為、儀治さんの承諾を受けた一門のみが江戸風鈴の名称を使用出来るので、製造所は現在「篠原風鈴本舗」さんと「篠原まるよし風鈴」さんの2カ所だけとの事です。

今回のお話は「篠原風鈴本舗」現当主でらっしゃいます、篠原恵美さんに工房見学とお話をお伺いさせて頂きました。

【ガラス吹き工房】

見学は”絵付け部屋”~”ガラス吹き工房”の順番で見学をさせて頂きましたが、風鈴の制作工程順にレポートさせて頂きたいと思います。

正面入口右手より奥のガラス吹き工房へと案内して頂きました。工房は結構広くて、炉のある手前側は2階部分も吹き抜けて天井が高くなっており(窯からの天井の高さが規定で決まっているそうです)、炉の無い奥側の2階部分には体験の方が絵付けをされる部屋があり、最高で80人程作業ができるそうです。

この部屋は真ん中の両側に窓・戸があり、この日は気持ちよく風が通り抜けていましたが、やはり冷暖房を付けることは出来ないので、工房内は夏は猛烈に熱く、冬は寒い状況で作業されるとの事で、1年中コツコツと大変な作業には違いありません。そうなるとまるよしさんのガラス吹き場はどれほど過酷なのかなと考えてしまいました。ですが、まるよしさんは立地がいいですし、私たちは2階で絵付けをさせて頂きましたが3階以上ある建物の様で、結構な人数でも体験が可能だそうです。

ガラス吹きの人数は男性3人でローテーションしており、この日は鹿児島での催事に行かれている方もいらっしゃるそうで、お1人で作業してらっしゃいました。

ガラス吹きの制作過程は、前回の”江戸風鈴/製作体験at「篠原まるよし風鈴」&「篠原風鈴本舗」レポート①”でもご紹介させて頂いたので、是非ご参照ください。

追加としまして、炉の中の温度は1,320度前後で、炉の中には坩堝(るつぼ=金属を溶かす為のつぼ)というつぼが2つ埋め込んであり、その坩堝の中にガラスが溶けているそうです。ガラスを溶かすのに4時間ほどかかる為、溶かしている間にもう一つのつぼからガラスを取り吹付をしローテーションしています。一つのつぼから大体100個くらいの風鈴が出来るそうです。

ガラス棒は”ともざお”と言い、吹いたガラスは10~20分程で冷めるとの事。

それから、「江戸風鈴は一つ一つ音が違うんですよ、」とお話をしていますと、「その音階ごとの江戸風鈴を使って演奏をされる、”風鈴演奏家の日向さん”て方もおられるんですよ。世界で唯一とおっしゃっていて、ここの2階で演奏会を開かれた事もありますよ。」と教えてくださいました。「風鈴だと持ち運び本当に丁寧じゃないと壊れやすそうですね。」「買い付けに来られてからその後来られてないので、大丈夫じゃないでしょうか。」”風鈴演奏家”とは初めてお聞きしましたが、さぞ繊細で綺麗な音色が奏でられるのだろうと想像し、けれど音を止める事が難しいので、演奏そのものはかなり大変なのでは?と思いました。

世界で唯一の”風鈴演奏家” 日向 真さん Website➡ http://www.lifeact.jp/kazaoto/

日向さんの上記のサイトのインタビューで苦労した点が、”作曲をしている最中に風鈴の音が気持ちよくて寝てしまった”と言う、大変微笑ましいエピソードも(笑)。日向さん曰く、「日本の風鈴の音は世界一繊細な音色なので、世界へもっともっと広めていきたい」と語られていて、各風鈴の音の違いも聞かせてくれています。それを聞くと音の違いが明らかで、また風鈴・江戸風鈴の趣を感じることが出来ます。

【絵付け工房】

さて、最初に取材させて頂いた絵付け作業と江戸風鈴についてのお話もまとめて行きたいと思います。

入口を入り、ショーケースの並べられた(風鈴と数々の表彰状なども展示されていました)スペースの脇に8畳程の絵付けの部屋がありました。通常こちらで長女・三女の娘さん達と一緒に、女性3名で絵付け作業をされているそうです。江戸風鈴の特長は、まるよしさんで伺った”鳴り口がギザギザなので音が一つ一つ違う事”それから”音がとても柔らかい”のだそうです。

この取材時の作業は、通常に売られている招き猫柄の金色の部分の絵付け作業で、この日の夜に招き猫の全体を黄色に塗ってこの招き猫たちは完成する様でした。

≪招き猫の描き方≫

  1. 墨で輪郭を描く
  2. リボンや鈴紐の赤い部分を描く
  3. 鈴や耳の金色の部分を描く
  4. 全体を黄色で塗る

全て手作業で行っている為、1日の製作数は100~200個。一年中を通して(※ほぼ土日も、場合によっては寝られない事も…)製作されており、今も夏前の制作の繁忙期で(※まるよしさんもそうでしたが、今は修学旅行生も沢山来られる時期)~9月頃まで大変お忙しいとおっしゃっていました。7月~夏場は催事の数がより多くなって忙しくなる為、シーズンオフの時も製作そのものはお忙しいそうです。

顔料を油で溶いて絵付けをします。筆で作業されているかと思いきや、とても小さい刷毛で絵付け作業をされておりました。聞いてみると絵の具がとても粘り気がある為、筆よりも刷毛の方が描きやすいのだそうです。そして、「油の入った顔料だと筆が傷みやすいのでは?」とお聞きすると「かえって油性なので虫に喰われにくくて、筆(刷毛)は長持ちしますよ。」との答えが返って来て、なるほど!と思いました。

下写真/奥に見えるのが通常の招き猫柄風鈴。黄色と言えば風水で西側に飾ると金運upと良く知られています。「こちらの黄色い招き猫風鈴を西に飾ったら、いい事がありました!」と、ご報告もあったそうですので、是非金運upしたい方は飾ってみてはいかがでしょうか?!

娘さんは、特注品らしくベースに青い色を塗られていました。過去には色付きガラスを吹いて、そこに同じ伝統工芸の江戸切子などを施していた事もあったそうですが、今は切子にした時に綺麗に白い部分が出るように、ガラス専門の加工所に色付けをご依頼されているそうです。

江戸風鈴×江戸切子の龍の柄なども展示されており、とても綺麗でした!

東京と言えば、上野動物園のパンダさん柄、とっても可愛い!

あれあれ?パンダさん柄はまるよしさんの所にも居たようですよ…?

こちらは通常の柄の品々…だるまさんがひょっこり、こちらにもひょっこり…

限定商品TOKYOシリーズ…。

特注品でしょうか…中央/てんとう虫柄と奥/海洋柄。リュウグウノツカイの螺鈿(らでん)が煌いています。

使い込まれた、絵付け道具の数々…

数々の著名人の方も御来店されていらっしゃいます。そして、多種多様な特注風鈴が沢山…!

こちらの江戸風鈴の大きさは中央右の黄色い招き猫が”小丸”、その上のTOKYOシリーズが”中丸”、そして最左のサッカーボールやその下「東洲斎 写楽/浮世絵/歌舞伎役者」柄が大丸。形も様々で、”ひょうたん””しんすい””すずらん”とあります。

話しは少し逸れますが、今年御年94歳になられる篠原儀治(篠原風鈴二代目・平成16年名誉都民の称号授与)さんによる、口語りの御本も発行されています。大正時代~の東京下町の様子や、ガラス風鈴の歴史、儀治さんの人生と周りの方々、そこに生きた方にしか分からない実情をこの本を以て教えて下さっています。まだまだ、これからもお元気でご活躍される事を、陰ながら心より応援しております。

そして何より、個人的に今の現状と今後についてお聞きしたいと思っていました。
「今ではマンションなどの住宅も増えたり、昔と今では違って色々と大変なのでは無いでしょうか。」
「昔のように窓辺に飾れないマンションやアパートでも楽しめるように、室内や机に飾って置けるスタンドも販売しています。確かに今はガラスを型に入れて製作したものに絵をシールで張り付ける大量生産の物が出回っています。有名な墨田区浅草の”ほおずき祭り”でも昔はうちの風鈴を付けて頂いていたのが、元々おまけで風鈴を付けていたので予算の都合上らしく、今ではその輸入品の安い風鈴を付けています。」
「それは、大変がっかりな事ですよね、やはりご依頼を受けたいと思われますか?」
「きちんと買い取って頂けるのであれば、お引き受けしたいです。」
ほおずき市も昔からの江戸浅草の伝統行事なので、大量生産品を付けている事にがっかりしましたが、やはり予算という”現実”がどちらにもあります。しかも元々おまけだったのであれば尚更です。どちらの都合も考えれば致し方ない事なのかと考えてしまいました…。

最後に、江戸風鈴の伝統が篠原儀治さんからご長男裕さんへ、そして今はこちらへ嫁がれた恵美さんが受け継いで、現当主をされていらっしゃいます。伝統を守るお宅へ嫁ぐ際の覚悟、そしてそれを40年以上守り続けて来られた事、大変な事もきっとあったと思います。同じ女性として、とても気丈でらっしゃる恵美さんをとても誇らしく、尊敬致しました。

そして、日本中で後継ぎ問題がある中、篠原風鈴本舗さんの伝統はご長女さんご夫婦へと受け継がれていらっしゃるとの事で、とても素晴らしい事で安心を致しました。常々思う事ですが、辞めることより続けることの方が物事難しいのです。この江戸風鈴と言う美しい音色の伝統を「篠原風鈴本舗」さん「篠原まるよし風鈴」さんそれぞれが、守り・受け継いでいかれる事なのでしょう。

この度は、大変お忙しい中取材をさせて頂きまして、誠にありがとうございました!篠原風鈴本舗さんのご発展・ご活躍をお祈りしつつ、心より感謝御礼を申し上げます。そして、この記事を読んでくださった方の心に何かが残り、江戸風鈴そのものや日本文化・制作体験に興味が湧きましたら、誠に幸いでございます。

※追伸:「篠原風鈴本舗」さんでは特注品などの受注もされていらっしゃいます!特にシーズンオフの10~2月頃に発注をして頂けますと大変有り難くお待ちしております。との事です!

「篠原風鈴本舗」さんにて購入させて頂いたひょうたん型・うさぎ柄江戸風鈴(左)と「篠原まるよし風鈴」さんにて制作させて頂きました小丸江戸風鈴(右)です!

「篠原風鈴本舗」さんは、都営新宿瑞江駅・篠崎駅のどちらからも同じくらいの距離にあり、道も都内としては広い、とても落ち着いた閑静な住宅街にありました。「篠原まるよし風鈴」さんは御徒町駅から蔵前方面へ直進、近くの佐竹商店街へ入って右側に店舗がありました。

それぞれ特別発注・体験・見学などの際は、一度お電話等にてご連絡をされまして、ご迷惑の無いよう何卒宜しくお願い申し上げます。

■「篠原風鈴本舗」 Website➡ http://www.edofurin.com/
Google map➡ https://goo.gl/maps/GtwzQ6tBoFJ2

■「篠原まるよし風鈴」 Website➡ http://www.sam.hi-ho.ne.jp/maruyosi/index.html
Google map➡ https://goo.gl/maps/9n5y17aJNj32

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文/二月一日 写真/安宅真樹

©安宅真樹:PROFILE
イベント撮影やウエディング、エンゲージメントフォト、家族写真
様々な業種の店舗のwebページ、ブログ、DM等の撮影も行う。
Website➡ http://151truevine.wixsite.com/less-is-more

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